豚肉文化が根づく町だからできた、
奇跡の無添加ハム・ソーセージ。

 

九州の北部、有明海と多良山系に挟まれ、美しい自然が広がる佐賀・太良(たら)町。この小さな田舎町に、日本中のお肉好きをうならせるハム工房があります。

その名も「シャルキュティエ田嶋」。シャルキュティエとは、食肉加工職人のこと。ここでは熟練の職人たちが、さばきたての豚肉を使った、全国でも珍しい無添加のハムとソーセージをつくっています。

この町だからこそ実現したと言われる“奇跡の手づくりハム・ソーセージ”について、社長の田嶋征光氏にうかがいました。

豚肉の町に生まれ育った
お肉屋さん二代目の挑戦

「佐賀といえば牛肉を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、ここ太良町はずっと変わらず豚肉の町。豊かな土壌のおかげで養豚が盛んで、小さな町なのに豚肉専門のお肉屋さんがかつては6軒もあったほどです」

田嶋氏がちょうど生まれた年に、父親が肉の卸業者として独立し、有限会社田嶋畜産を設立。当時の自宅は食肉工場と兼用していたこともあり、幼少の頃から常に豚肉が身近にあったと言います。

「昔から、太良町の人は誰よりも豚のおいしさを知っていました。私自身も保育園児のときから、お腹がすいたら豚の骨をかじっていたと父親から聞いています(笑)」

▲東に有明海、西に多良山系。海と山に囲まれた、風光明媚な佐賀県・太良町

まさに生まれながらにしてお肉屋さんのDNAを受け継いだ田嶋氏。地元の高校を卒業した後は、豚肉のさらなる可能性を探究すべく、東京の畜産大学に進学して食肉加工を勉強。その後、神奈川のハム会社に就職し、修業を積みます。

こうしてお肉屋さんの二代目は、一途に着実に、豚肉加工のプロフェッショナルの道へ。1994年には太良町に帰郷し、念願だったハム・ソーセージの製造をスタート。地元に根ざしながらコツコツとつくり続けること12年、大きな転機が訪れました。

▲オープン当初の屋号は「田嶋ハム工房」。今でも地元では「田嶋ハム」の名で親しまれている

初出品で金メダル8個!
ドイツのコンテストで快挙

2006年、当時38歳だった田嶋氏はハム・ソーセージ職人としての腕試しと考え、ドイツの「国際食品加工品コンテスト(SUFFA)」へ出品を決意したのです。

“食肉加工の本場”といわれる国へ乗り込むにあたり、ドイツタイプのハム・ソーセージづくりを徹底的に研究。日夜試作を繰り返した結果、なんとゴールド8個、シルバー7個、ブロンズ3個を獲得!出品した20品のうち、実に18品が入賞するという快挙を成し遂げたのです。

「たくさん出品しても受賞できない方もいた中で、初出品でこれほどメダルが獲れるのはすごいと周囲にも驚かれました。大きな自信につながりましたね」

本場ドイツの製法を勉強したことで、「より高品質ハム・ソーセージをつくるためのヒントをたくさん得ることができた」という田嶋氏。そのひとつが「ウデ肉」の上手な使い方です。

「ソーセージづくりでよく使われる豚のウデ肉は、甘みや旨みといった肉本来の味わいが特に分かりやすい部分。工房ではウデ肉をふんだんに使うことで、加工品でもきちんと“肉の食感”を残すように努めています」

▲ゴールドメダルを5個獲得すると授与されるという、SUFFAのカップを手にして笑顔の田嶋氏。背後には、国内の各種コンテストの入賞盾や感謝状などもずらり

きっかけは、知り合いのお子さん
超新鮮肉を使用した無添加への新たな取り組み

今から約10年前、数々の賞を受賞し、お客様からも評価をいただく一方で、「ハムやソーセージに使われる添加物を気にされるお母さんの声も耳にするようになった」という田嶋氏。そんなとき出会ったのが、ある知り合いのお子さんでした。

「そのお子さんが添加物アレルギーだったんです。ハムやソーセージを食べたくても、添加物が原因で食べられないと聞きました。私は以前より、風味、食感、鮮度などの品質を保つためには多少の添加物は使用したほうが良いと考えていましたが、意識ががらりと変わりました」

アトピーやアレルギー持ちの子供たちでも安心して楽しめる無添加の商品はつくれないものか。従来通りの冷凍肉を使用したら、ハムはつくれてもソーセージを完全無添加でつくるのは不可能。試行錯誤の末、今から約10年前にたどり着いたのが「温屠体(おんとたい)製法」でした。

「温屠体製法」は、昔のドイツでハムやソーセージを家庭でつくっていたときの伝統製法。ソーセージづくりの特殊な製法であり、日本ではかなり珍しいつくり方です。屠畜(とちく)直後のまだ温かい状態の豚肉をそのまま用いることで、結着剤や保水剤といった“つなぎ”に頼ることなく、お肉が本来持っている結着性を活かして加工する方法です。この製法を利用すれば、「豚肉」「食塩」「砂糖」「香辛料」のみでハムやソーセージをつくることができるのです。

▲温かさの残る豚肉から、丁寧に骨を抜いてさばく。通常ソーセージにはあまり使われない高価なロースやヒレの部分も、すべて惜しまず使う

奇跡の製法が成り立つ理由は、
地の利を生かしたスピード感

温屠体製法の第一条件は、屠畜場が近くにあり、屠畜したての枝肉(骨が付いたままの豚肉)を入荷できるという立地。「私たちの工房は、この条件を満たしている希少なケース」と田嶋さんは言います。

加工の目安は、屠畜から約6時間以内がリミット。ご近所の屠畜場から連絡が入るやいなや、工房のスタッフがトラックで駆けつけ、工房に戻るとすぐに骨取り作業のスタートです。枝肉が抜骨され、さばかれ、みるみる姿を変えていきます。

「ここまでしないと完全無添加は成り立たない。豚肉が新鮮なうちにすべて行わないといけないので、温屠体製法を採用している工房は全国でも珍しいです。私が知っている限りでも、片手に数えるくらいでしょうか。この地の利と、老舗の地元業者の存在。昔から脈々と豚肉文化が息づく太良町だからこそ実現できた製法と言えます」

▲さっきまで枝肉だった豚肉が、数時間内には腸詰めされてツヤツヤのソーセージに。職人技とスピード感が命! 

一度食べれば誰もが納得
まったく違う、これぞ“お肉の味”!

無添加商品が支持を集める理由は、食品添加物を使っていないというだけではありません。もちろんその味にもあります。

田嶋氏いわく、通常私たちが食べているハム・ソーセージは、鮮やかなピンクや赤色を出すために少なからず発色剤が使われており、独特のあのフレーバーは、実は発色剤の味であることが多いのだとか。

「初めて私たちの無添加ハム・ソーセージを試されたお客様から、『お肉を食べている感じがする!』という感想を多くいただきます。新鮮な豚肉を使い、しかも完全無添加でつくっているわけですから、正真正銘、お肉本来の自然な味と食感を味わえるはずです。一度召し上がっていただければ、これまで慣れていた加工品の味わいとはまったく違うので、きっと驚くと思いますよ。ぜひ家族みんなで楽しんでいただきたいです」

▲工房内で燻製中のソーセージ。貴重な無添加製品として、最近では地元の学校給食からの問い合わせも増えているとか

自慢の“お肉本来の味”を最大限に引き出すため、原材料への配慮も抜かりありません。自社でさばく豚肉は、地元・佐賀県産と、お隣の長崎県産の良質な国産豚だけ。食塩は、長崎・五島灘でとれたミネラル塩。そして砂糖は、北海道の甜菜(てんさい)糖を使っています。さらには燻製に使うチップも、九州産の桜をメインに使用するなど徹底的にこだわります。

目指したのは「つくり手の顔が見える逸品」。信頼できる豚肉と、こだわりの製法。そこに、良質な食塩、砂糖、香辛料だけを加えて真面目につくり続けるハム・ソーセージは、シンプルだからこそ、素材が映えて、しみじみおいしい。

「子供の頃から、飽きることなくお肉が好き。そもそも加工品の製造を始めたのも、私が食べたかったからなんです。これからも自分自身が食べたいと思う商品を真摯につくっていきたい」と田嶋氏。シンプルだけど強い思いが、「シャルキュティエ田嶋」のハム・ソーセージにはぎっしりと詰まっているのです。

▲旗艦商品である無添加シリーズ「HOMARE」。プレーンウィンナー、黒こしょうウィンナー、ロースハム、ベーコン、フランクフルト、スペアリブなどを多彩にラインアップ
▲2021年2月には、工房の規模を拡大し、山あいの農場へと移転予定。田嶋氏の挑戦は、まだまだ続きます